和大産学連携通信 No.71(2023年3月号)
公開日 2023年03月24日
目次
1.NEWS
2.研究紹介
3.和大産連センター活動カレンダー
4.技術相談受付けています
5.編集後記
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1.NEWS
a) 産学連携イノベーションセンター長退任のご挨拶「産学連携イノベーションセンター長離任にあたり」
今年度で私は産学連携イノベーションセンターのセンター長の職を辞することになりました。同時に和歌山大学を”卒業”します。
2017年12月に本センターのURA/教授として着任し、2019年度から現職となりました。当初、政府が提唱するSociety 5.0を意識しつつ、一方で和歌山県の人口減少による働き手の不足などが課題となるため、”自前主義”を捨てて、オープンイノベーションの活用、国際的なコラボレーションなどを取り入れた産学の連携のあり方を模索していました。そのための方策の一つとして、従来の共同研究を一歩進めて企業から研究者を受け入れ、本学の教員と同じ資格で働いていただく共同研究講座のしくみをつくりました。しかし、紙のうえでのしくみだけでは、地元企業が共同研究講座に関心をもっていただけないばかりか、本学の産学連携を進めることができないと気が付きました。そこで、2020年度に20社近い地元企業を訪問し、我々の活動と共同研究講座について説明しつつ、企業からの意見をうかがいました。その中で気が付いたことは、地元企業の本学への関心があまり高くないことでした。本センターでは、毎年地元企業の方を招いて、システム工学部などの研究室を見学していただく催しを開催していましたが、これだけでは効果が薄いと考え、2021年度から専門分野に根ざした交流会を立ち上げることにしました。第1号は、化学交流会で、大変盛況な会となっています。2022年度にはロボット関係の交流会ができました。さらに、本学の教職員も地元企業への関心が必ずしも高くないと感じ、より地元企業のニーズに応える研究を支援する、”ニーズドリブン型の独創的研究支援”を行うことにしました。この中で若い研究員を雇用して、独創的な研究を応援する取り組みを行いました。就任当初目論んでいた共同研究講座が実現したのは、2022年度でした。情報戦略室の満田教授やシステム工学部と協力し、地元のクラウド関係の企業とともに第1号となるクラウド関連の共同研究講座がようやくできました。
もう一つ力を注いだことは、アントレプレナーシップ人材の育成です。バブル崩壊後、日本の経済や産業は少し停滞気味です。これを変えていくには、遠回りでも人材の育成が重要です。特に、日本では、新しい産業を起こしていく”精神”が希薄になっていると考えています。アントレプレナーシップは、起業するかどうかにかかわりなく、新しいコトを起こしていく”精神”を指します。和歌山大学で以前から、学生のスタートアップを支援していた、田代准教授や本庄准教授が中心となり、2022年度にこの関係の講座を立ち上げました。このような人材育成(人材イノベーション)と産学連携での技術イノベーションの育成を田代准教授が中心となってまとめ、来年度からの和歌山大学イノベーションイニシアティブ基幹の発足を文部科学省に申請し、2023年度予算として8000万円を越える予算を獲得することができました。この中のとりくみのひとつに、会社の将来を学生と一緒に議論する”オープンセミナー”があります。あるメーカーが本学と共同研究を希望されていましたが、いいテーマがありませんでした。そこで、このとりくみに協力を要請したところ、こころよく引き受けていだだき、大きな額の寄付をいただくこともできました。一方、アントレプレナーに必要な、知的財産権について学生に知ってもらおうと思い、2019年度から職員の小門弁理士や学外の企業の方と、”知的財産権”の講義を開講しました。この講義は、来年度以降も続けていくことになっています。また、2018年度終わりから富士通セミコンダクターの協力を得て、学生たちは富士通のオープン特許を用いたアイデアソンにとりくみました。その中の学生のグループが、2019年度に近畿経済産業局主催の「ビジネスアイデア学生コンテスト」において、近畿経済産業局長賞?関西みらい銀行賞(この会の最高賞)を受賞しました。
達成できず、残念だったこともいくつかあります。まず、外部資金の獲得です。本学は、外部資金の獲得状況がかなり悪く、上記の産学連携でいろいろな方策を打ち出しましたが、数字として改善させることができませんでした。本学の科学研究費の採択率向上にも、外部のコンサルタントの利用などをやってきましたが、残念ながら、改善させることができませんでした。これらは、新型コロナウィルス感染症の影響もありましたが、本質的に本学が以前から抱えている課題であり、これを改善できなかったことは、大いに反省しなければいけないと考えています。
産学連携から外れますが、これからの大学について少し述べます。少子高齢化した日本の社会に対して和歌山大学にかぎらずこれから日本の大学がどのように対応していくかが重要になります。ビジネス的に言えば、高校卒業生のマーケットが急激に縮小していくことになります。もし大学をある程度の規模で存続させようとするならば、そのマーケットは、日本の社会人と国際的な人材にシフトせざるをえないと考えます。その意味で、特にリソースに限界がある地方大学では、学部を中心とした従来の研究?教育のあり方を考え直すときではないかと思います。
最後に、本センターにご協力いただきました学内外のみなさまに、心から感謝申し上げます。
b) システム工学部の中嶋秀朗教授が、2022年度日本機械学会教育賞を受賞しました。
日本機械学会教育賞は、一般社団法人日本機械学会が学会表彰として贈る賞の一つであり、機械工学?工業分野に関わる教育活動において顕著な業績をあげたものに贈られます。本受賞は、Cybathlon(サイバスロン)という人間支援技術を活用する国際競技大会への参加を通じて、地方国立大の学生をエンカレッジし、世界で好成績を残せる国際的視野を持った人材育成を行ったこと、また、サイバスロンムーブメントを日本で拡げるために行った活動が評価されました。(中嶋秀朗)
詳細はコチラをご覧ください。
c) システム工学部の和田俊和教授に、電子情報通信学会2022年度フェローの称号が授与されました。
システム工学部の和田俊和教授に、一般社団法人電子情報通信学会の情報?システムソサイエティより、「コンピュータビジョン、パターン認識の実用的アルゴリズムの開発」に貢献があったと認められ、2022年度(令和4年度)フェローの称号が授与されました。
フェローの称号は、「学会への貢献が大でかつ学問?技術または関連する事業に関して功績が認められる正員に対して」贈呈されるもので、学会の各ソサイエティおよび学会員の推薦をもとにフェローノミネーション委員会で選出されました。
d) システム工学部の床井浩平准教授の研究が「朝日新聞デジタル」等で紹介されました。
VRを活用した防災訓練を紹介する「朝日新聞デジタル」の記事において、システム工学部の床井浩平准教授の研究が紹介されました。
詳細はコチラをご覧ください。
また、テレビ和歌山のニュース番組「6wakaイブニング」の3月9日(木)の放送内のコーナー「もっと知り隊和歌山の今」に床井准教授が出演され、「VR技術を活用した新しい避難訓練のかたち」の研究について解説されました。(コチラ)
2. 研究紹介
システム工学部 准教授 大平雅雄「ソフトウェア開発?保守支援のためのリポジトリマイニング環境の開発?」
リポジトリマイニングとは、蓄積されたビッグデータ(過去の開発履歴データ)からソフトウェア開発に有用な知見を導き出すための技術です。大手ITベンダでは、ビッグデータ時代のソフトウェア開発?保守支援技術としてすでに活用を始めています。
これまで多種多様な手法が提案されており、プログラミング、テスト、保守、プロジェクト管理など、様々な目的で利用することができます。その一方で、様々な種類の手法と応用領域の広さから、技術選択に迷う実務者も少なくありません。
詳細はコチラ(Seeds Index 2022)をご覧ください。
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3.和大産連センター活動カレンダー
産学連携イノベーションセンターの最近の活動と活動予定を掲載しています。
詳細はコチラをご覧ください。
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4.技術相談受付けています。
技術相談をお寄せください。和歌山大学 産学連携イノベーションセンターでは積極的に企業の皆様からの技術相談に対応いたします。「お問い合わせ」申込フォームよりご連絡下さい。
和歌山大学で対応が難しい場合はMOBIO(ものづくりビジネスセンター大阪)の産学連携機関に登録している35の大学?高専と連携して、対応可能な研究者をご紹介します。近隣の府県の研究機関(公設試)でも技術相談を受け付けています。研究的開発的要素のあるものは大学に向いていますが、単なる測定などは、むしろ公設試が適しています。その様な事案については公設試を紹介して問題解決に当たります。
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5. 編集後記
月日のたつのは早いもので、だんだんと暖かい日も増え、桜の咲く季節がまたやってきました。花粉症の人にはつらい季節でマスクが手放せないことでしょう。コロナ禍のここ3年は皆がマスクをしていてせっかく目立たずにすんでいたのに、13日からはマスク着用義務が緩和され、元に戻ってしまいそうです。
さて、春は卒業のシーズンでもあります。本学でも学長はじめ執行部が交代します。新しい体制がどうなるのか、期待と不安を胸に新しい年度を迎えることになりそうです。(野原)
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連絡先 国立大学法人 和歌山大学 産学連携イノベーションセンター URA室
liaison@ml.wakayama-u.ac.jp? TEL 073-457-7564
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編集 国立大学法人 和歌山大学 産学連携イノベーションセンター
コーディネーターグループ 小畑、野原 URA 高橋、米田
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