12月のワダイノカフェ~2025年の移動~
公開日 2020年12月25日
020年12月21日(月)、ワダイノカフェ2020 vol.4をオフライン&オンラインでのハイブリッド方式で開催しました。
当基幹准教授の西川一弘さんと、わかやまNPOセンター副理事長?和歌山の交通まちづくりを進める会事務局長の志場久起さん、株式会社BEE(和歌山のIT企業)代表取締役の久保田善文さんを迎え、近未来の交通についてお話を伺いました。
当日の流れとしては、スピーカーと対面参加の5名はJR和歌山駅から貸し切りの和歌山バスに乗車し、ぶらくり丁を経由して南海和歌山市駅まで移動し、市駅到着後は車庫のバスに乗り換えます。
オンライン参加の10人には、バス発車時から車内の様子をZOOMでライブ中継しました。
バスはJR和歌山駅を出発しました。南海和歌山市駅まで約15分の道のりです。
久保田さんが司会進行のもと、西川先生と志場さんから乗車した355号車について、現役ではめずらしい古い車体であり、元は高速バスだったこと、座席や席番号など内部の仕様についてちょっとマニアック!?な説明を聞きました。(和歌山バス路線ルートの作成には、志場さんも協力されたそうですよ。)
全国に一つしかない「左折レーンから右折してバスの車庫に行く道」を体験して、車庫へ到着します。
車庫で降車し、次に乗り換える504号車の外観を見ながら特徴を説明してもらいました。今回利用した355号も504号のバスも、両方とも今はあまり稼働していない車両であり、今回のために指名してお借りしました。
504号車に乗り込み、今回のテーマである「自動運転」「Uber」「MaaS」についてお話を伺います。
?
まず、「自動運転」のテーマについてです。久保田さんから「バスを利用していて何か新しいことがありましたか」と質問があり「4月から開始された交通系ICカードの導入」が参加者に一番多い回答でした。
また、「和歌山市内で自動運転バスが走るとしたらどのルートがよいですか」との質問には「観光案内も含めた雑賀崎ルート」「大学から最寄り駅ルート」「和歌山駅から市役所前ルート」などアイデアが出ました。
和歌山市内で自動運転が可能かどうかを皆で考えるために、自動運転の概念について西川先生のお話を聞いていきます。
自動運転には国土交通省が定義した1~5までのレベル分けがあり、1?2はドライバーが車を監視し3~5はシステムが車を監視します。
事例紹介として、西日本鉄道株式会社が行った中型自動運転バス実証実験が紹介されました。
バスの車体にはカメラ等複数のセンサーが四方八方に搭載されており、AIが画像処理と予測を行います。
運行区間の信号には「信号情報提供システム」が導入されていて、バスが情報を受け取ります。
GPS電波が入りにくい区間には路面に磁気マーカーが埋められており、磁気センサーで感知しながら走行します。
さて、自動運転バスが不得意なことは何でしょうか。
参加者からは「車内のトラブルに対応出来ない」「乗り継ぎを教えてもらえない」「曲がるのが苦手」「バック」「追い抜き」などの意見が出ました。
答えは、「違法駐車やバイクなどを追い越すことには、まだ対応出来ない」でした。
今後はバス側のレベルアップだけではなく、走行する道路側の整備、我々ドライバーの急な割り込みなど突発的事象への対応が課題となるそうです。
和歌山市での、自動運転技術の導入はまだ少し遠い未来になりそうですね。
?
次に、配車システム「Uber」についてお話を聞いていきます。
Uberは、アメリカ合衆国の企業が運営する自動車配車ウェブサイトおよび配車アプリです。
日本では白タク行為(国の営業許可を得ていない個人がタクシー業を行う違反行為)を助長するとして、ほとんど広まっていません。
唯一、京都府丹後町において平成28年5月から地元NPO法人による「住民同士のささえ合い交通」でUberアプリを使ったマイカーの配車システムを運行しています。
現地で利用された西川先生は、買い物や病院へ行く生活輸送以外に、旅館への観光客の送迎が多くなれば、旅館は送迎車を保有しないでよくなるのではとお考えでした。
久保田さんからは、AIやロボットが普及すると仕事が無くなると言われていますが、Uberがやっているのは管理職の仕事であるマッチングであり、直ちに人間に成り代わる訳ではないとのご意見でした。
志場さんからは、福祉運送業界が遅れていて、病院まで連れて行ってくれるボランティア団体は和歌山市内に2つしかない。距離により金額を設定した有償ボランティアを、仕事を退職された方から募れば年金+収入になるのではないかとのご意見でした。
和歌山市ではタクシー産業が盛んであるため、Uberの導入は難しいかもしれませんが、この先に期待です。
?
次に、「MaaS」について西川先生のお話を聞いていきます。
Mobility as a Serviceの略で、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索?予約?決済等を一括で行うサービスのことです。
国土交通省が定義したMaaS提供に不可欠なデータにはレベル0~4があります。現在はレベル2~3程度で、既存システムの組み合わせであり、まだまだ不便な部分もあります。
これから先は、JRなどの交通業界がリードするのか、または決済システムを自前で持っているGoogleなどIT業界がリードしてMaaSが進んでいくかもしれません。
明光バスさんが「とくとくフリー乗車券」をモバイルチケット化され、和歌山バスさんはICカード?IC定期「kinoca」を発行しているなど、志場さんから和歌山のMaaSの状況について聞きました。
和歌山市でもビッグデータの蓄積が始まり、いずれGPS付バスやダイヤ検索?乗換検索にもデータが反映されるでしょう。これまでよりも安いコストで便利なことが出来るようになったと言えます。
和歌山市でも、観光型のMaaS等、和歌山市に適した形のサービスが提供される日は近いかもしれません。
最後に、2025年の未来予想について
志場さんからは、5年後というより10~20年後の話もあります。コロナで時代が変わるかもしれない。ひょっとすると2年後、3年後には交通事業者が倒れることもある。今ある交通機関を守るのに自治体や皆で知恵を出し合って、例えば外出を何回かに1回バスにするなど協力が必要で、便利になれば皆利用すると思うとのお話でした。
西川先生からは、色々なテクノロジーの話をしましたがコミュニケーションが大切です。2025年は、縮小再生産の時期になるでしょう。昔は新しい電車を作ればお客が増えましたが、今は利便性を上げても爆発的には増えません。部分最適でシュリンクし、例えば、配送?郵送?ゴミ収集を併せる運送も検討できます。
インフラそのものをどうしていくのかが課題になっているとのお話でした。
私たちの生活に欠かせない公共交通を将来にわたって維持するためには、便利で安全なシステムへ変化していくとともに、今後も地域の皆様のご協力と積極的な利用が重要です。
参加された方からは「久しぶりにバスに乗ったので新鮮だった」「高齢社会では支え合い交通のような取り組みが広まればよい」などの感想をいただきました。
?