【開催レポート】第149回わだい浪切サロン「ひととAIは分かり合えるか?~AIの利点と限界に迫る~」
公開日 2023年10月20日
第149回わだい浪切サロン「ひととAIは分かり合えるか?~AIの利点と限界に迫る~」を下記のように開催しました。
話題提供|松田 憲幸氏(和歌山大学社会インフォマティクス学環 教授 )
開催日時|2023年9月20日(水)19時?20時30分
開催方法|南海浪切ホール1階多目的ホールおよびオンライン講演(ハイブリッド開催)
参加者数|対面参加者名 オンライン40名 会場参加者37名 合計 77名
講演内容|
今回は今話題の生成AIについて、社会インフォマティクス学環の松田憲幸先生にAIとは何かをご講演いただきました。講演でAIとはデータ相互の相関関係は理解できるが、因果関係は理解できない。また子供でも分かることが理解できないなどの欠点を持つ。その仕組みも、競技かるたの例を挙げ、競技かるたでは上の句から下の句を推測しカルタを取り合うが、それと同じように生成AIもある語句から他の語句が推測しているだけであると述べられました。会場とオンラインから熱心な質問がありました。先生のコメントと併せて掲載致します。
① | ◆講演を終わってのご感想、参加者の皆様へ何かございましたらご記入ください | |
生成AIは,人の知性のための一輪車です.私たちの相談相手に,あるいは,私たちが思いつけない言葉使いや表現を助言してくれたり,私たちが何かを作り上げる作業を手伝ってくれたりします.言葉を表面的に駆使し,言葉に言い当てられない文化や常識は通じないが,何でも知っている機械の友人?同僚になるかもしれません.現状は,再学習による機密情報の漏洩や,もっともらしいウソを含むといったリスクが指摘されています.これからも,多々,新たなリスクが見つかると思います.これら危険性を見積もりながら,この新しい知性の乗り物を,上手に乗りこなせるようになれば,今までできなかった,新たな営みにつながると思います. |
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② | ◆ここが言い足りなかった(補足や参考資料に関する言及など) | |
競技カルタを例に,生成AIについて説明します. 1)人が,歌を厳選します 【データセットと呼びます】 2)人が,ゲームのルールを決めます 【定式化と呼びます】 3)AIが,ルールに沿って決まり字を分析【データセットの特徴をAIが独力で抽出】 4)人が,上の句を読む 【AIへの指示(質問)に相当】 5)AIが,下の句を答える 【AIによる回答に相当】 データセットとゲームルールを定式化することで,AIを構築します.AIはゲームルールの観点からデータの特性を抽出します. |
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③ | ◆質問に対するご回答など | |
人は,日々の生活の営みにおいて,身体を通して,無意識?無自覚に常識や文化を獲得します.たとえば,駅前の群衆の中から友人を見つける方法を/“気分はサイコー”が人の名前にふさわしくないことを/猫の何が観光客を引きつけるかを,誰からも教わらずに無意識に獲得しています.こうした,人類の共通認識は,無意識に獲得しているがゆえに,意識的に言葉や数値で説明すること(定式化すること)が極めて困難です.身体を持たないAIのために,どんなに大量の文章を用意しても,人として生きる共通認識について説明するには,“クイズでは,隣の回答者が間違えた誤答を繰り返さない”,“たしかに共通の親をもつのが兄弟だが,それは異なる人の間でなけれっばならない(当初AIは同じ人物と人物を兄弟と判断した)”ことから教えなければならなかったワトソンの開発者のように「時間が足りない???永久に終わらない」ことになります.AIは,駅長タマと帽子の間の相関を把握しますが,観光客がなぜ惹きつけられるのか因果を把握することができない所以です.相関だけ把握して生成したAIの答えには,帽子をかぶってベンチに座る猫は,観光客を惹きつけるといった,もっともらしいウソを生成してしまいます.アナリストである生成AIの性能は,提供されたデータセットの内容(和歌)と定式化されたルール(競技カルタの規則)によって決まります. |
講演風景
以上