【開催レポート】第3回ワダイノLIVE「一緒に考えてみませんか発達障害 ~子ども?家庭へのサポートについて~」
公開日 2024年10月10日
第3回ワダイノLIVE「一緒に考えてみませんか発達障害 ~子ども?家庭へのサポートについて~」を下記のように開催しました。
話題提供|竹澤 大史(タケザワ タイシ)和歌山大学教育学部 准教授
開催日時|2024年9月18日(水)19時?20時30分
開催方法|岸和田市中央地区公民館4F多目的ホール ①対面参加、②オンライン同時配信、③岸和田市桜台市民センター同時配信(ハイブリッド開催)
参加者数|オンライン参加者46名 会場参加者30名 桜台市民センター2名 合計 79名
講演内容|竹澤先生には、発達障がいとは…の基本の部分から、分かりやすく丁寧にお話しいただきました。終了後にも、多くの方々が竹澤先生の周りに集まって、ご相談などをされていました。
竹澤先生からサロンでの講演後、下記のように感想と追加のコメントをいただいていますので、ご紹介します。
① 講演を終わってのご感想、参加者の皆様へ何かございましたらご記入ください
皆様お忙しい中、ご参加くださり、熱心に聞いてくださりありがとうございました。講演時間の配分がうまくいかず、説明が不十分になってしまい申し訳ありませんでした。今回お話しした内容が少しでも皆様のお役に立ちましたら幸いです。
② ここが言い足りなかった(補足や参考資料に関する言及など)
発達障害や、その疑いのあるお子さんへの支援については、周囲の気づきや診断告知の前後から、始めていただければと思いますが、ご本人やご家族のお気持ちを考えながら、寄り添いながら進めていただけると良いかと思います。ご本人の困難や苦手さの克服ということだけではなく、どのような支援があれば、周りの人と同じ様に安心して学び、生活できるか、ご本人やご家族と相談しながら考えていたければと思います。そのような環境、社会は、全ての人々にとって安心して暮らしやすいものになると思います
③ 参加者の皆様からのご質問に対する回答
オンラインでいただいた質問で,当日にお答えできなかった質問を一部回答させていただきます.
質問1 お子さんへの告知について
お子さんへの告知のタイミングや伝え方などは、バリエーションがあり、一つの正解がある訳ではありません。しかし、例えば、ご本人が疑問に思い質問してくれた時や、自己理解について関心が高まっている時などは、ご本人のニーズに合っていますので、一つのタイミングになるかもしれません。一方で、ご本人のニーズに合わない形やタイミングで伝えると、告知のメリットよりもデメリットの方が勝る場合があるので注意が必要です。また、ご本人が困って追い詰められているような状態よりも、落ち着いて安定している状態の方が良いのではないでしょうか。伝え方も重要だと思います。診断名や特徴だけではなく、具体例を説明しながら、しかも苦手なところだけではなく、得意なところや、困ったときにどう対処するかなど、肯定的な面も併せて伝えると良いと思います。かかりつけの医師から伝えてもらったり、また書籍やメディアなどを活用して伝える方法もあります。
質問2 ごきょうだいへの配慮について
障害のあるお兄さんについて、小学校低学年の妹さんが、羨ましく「ずるい」と感じるのは仕方がないことだと思います。妹さんが理解しやすい形、方法で、肯定的に説明できると良いと思います。障害名や苦手なことだけを伝えても、十分な理解につながらないかもしれません。苦手なことの数と同じぐらい、得意なところや良いところがあること、お兄さんだけを特別扱いしていることではないことも分かってもらえるといいですね。ごきょうだいへの支援のニーズとして、障害のあるきょうだいについて、正しい知識を得るという事が重要だと言われています。絵本や動画など、分かりやすい媒体を活用して伝える方法もあります。また妹さんの辛い、複雑な気持ちを受けとめてあげることも大切だと思います。そのような感情を抱くことは、自然であり、決して悪いことでないことを伝えて下さい。普段、妹さんが我慢するような機会が多ければ、例えば、妹さんと親御さんだけで過ごす特別な時間を作ってあげることなども良いかもしれません。
質問3 発達障害のある子どもが学校、教育現場で認知されていない状況について
文部科学省の方針により教育現場での認知は、先生方への研修の機会を含めて
少しずつ進んでいると思います。しかし、特別支援教育に関する専門性の確保という点では、地域差や学校によって違いがあるようです。お子さん一人ひとりの教育的ニーズを捉えて、そのニーズに沿って個別の教育、集団での教育を考えていく必要があると思います。そのためには専門性の高い先生の配置など、必要な予算を確保することが重要だと思います。
質問4 幼稚園から小学校入学時に小1ギャップがあることについて
幼稚園や保育園から小学校へと環境が大きく変わる時期に、お子さんたちが成長される一方で、環境の変化についていけず、いわゆる「不適応」の状態になることがあります。しかし、これはお子さんの問題というよりも、環境の影響が大きいのではないかと考えられます。環境への適応を押し付けず、学習の内容や進度を考慮する必要があるのではないかと思います。特に発達障害など特別な教育的ニーズのあるお子さんへの指導?支援には十分配慮する必要があると思います。
質問5 発達障害ではなく「子どもの特性」として理解すべきではないか?天才?科学者や芸術家など発達障害のある人は多いのではないか?普通の事ではないか?
「発達障害」は、発達障害者支援法で「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義されています。似たような医学的な診断カテゴリーとして「神経発達症」などもありますが、いずれにしても、脳の働きに特徴があって、本人の努力が足りないとか、養育環境が原因ではないと考えられています。勿論、科学者や芸術家の方々の中に発達障害のある方はおられますし、同じ様に、他の職種の方々の中にも一定数おられると思います。その点においては「普通」のことだと思うのですが、生まれつきの特徴があることによって、日常生活において生きにくさを感じたり、周囲の気づきや適切な支援や教育がなされないことによって、より辛い経験を重ねることは、その人の発達や成長に重大な影響を与えることが予想されます。診断名や医学的なサポートは、ご本人やご家族、周囲による適切な理解や支援に活かされるべきであり、周囲の決めつけやレッテルを貼ることにつながらないよう十分注意する必要があると思います。そのためにはご本人、ご家族、支援者が共通認識をもって、一緒に考えていくことが重要だと思います。
以上