プロジェクトタイトル | 観光目的地の競争優位性 – DMOマネジャーの役割に着目して |
研究ユニット | DMO, Management |
代表者 | 八島 雄士 |
メンバー | 佐野 楓, キム?ジェウク, 宮地 直樹, 堀込 孝二, 西尾 建 |
プロジェクト期間 | 2018年5月1日~2019年3月31日 |
プロジェクト概要 | 日本政府が訪日旅行者の増加による観光産業の発展を一つの柱として持続的な経済成長を試みるなかで,日本版DMO候補法人および登録法人が増加している。また,現場では,DMOをめぐるガバナンス,特に,理事会と事務局との相剋などの現象が見られる。一方,アジアや海外を含めた市場における観光目的地の競争優位性確保といった国際的な動きのなかで,よりシステマティックな経営戦略策定と実施が必要になる。そこで,本研究は,DMOをめぐる日本国内外での経営諸課題について,事務局長等のDMOマネジャーの役割に着目する。DMOマネジャーは,経営戦略とその実施を仲介する役割を担うので,その可否は経営活動の成功の鍵となる。特に,管理会計におけるサービス?リエンジニアリング(service re-engineering SRE)の知見を参考に,具体的には,観光ガイド事業とその認証システム,および,コミュニティ開発事業におけるスポーツの利活用に関わる諸課題を想定し,DMOマネジャーがバランスト?スコアカード(BSC)を用いて客観的な数値を示すことによって前向きな議論を創出できることについて,参与観察やアクションリサーチの研究方法で検証する。また,UNWTOが推奨し,国際観光学研究センター(CTR)が推進するSDGsの諸項目について,サービタリティの方程式に当てはめるなかで,DMOの持続的な経営に資するポイントを指摘する。ただし,研究を進めるなかで,量的分析が必要とされ,費用と時間が許せば副次的に実施する方針である。なお,都市公園のパークマネジメントにおける諸課題をサービタリティ概念により分析している事例をベンチマークとし,DMO形成の研究で関わりができている田辺市熊野ツーリストビューローおよび日本クリケット協会事務局をフィールドワーク先とする。研究成果としては,第一に,管理会計分野のサービタリティ概念を観光学に応用することにより,観光地経営の理論的基盤を再整理することに貢献したい。第二に,日本版DMO政策をめぐる最近の現象を整理し,その課題を抽出するとともに,今後に生じる観光目的地同士の関係性のなかで,健全な競争を創出する方策を提言する。 |
実績?成果
プロジェクトの成果について,「セミナー等の開催,講演など」,著書および論文などを含む「調査?研究」,「その他」に分けて述べる。
1. セミナー等の開催,講演など(一部)
①会議への参加:関西観光本部グランドデザイン策定会議に参加(担当:八島,合計3回)
②研究集会中間報告:国際観光学研究センター研究集会にて,“From Sponsorship to Partners: Exploring Organisational Change in a Japanese DMO”を報告(担当:キム,2018年11月)
③研究会の企画参加:観光産業を担う中核人材育成講座の一環として,観光学部事業連携委員会と連携し,「観光産業界における中核人材育成」に関するヒアリング情報交換会を企画し,関西観光本部において実施した(担当:八島,2019年3月1日)
④調査への協力:関西観光本部戦略企画部における広域周遊に関するマーケティング調査への助言を行った(担当:八島,2018年9月から2019年3月まで,5回)。
2. 調査?研究
①学会報告:Kim,J.W., Yashima,Y, Nagai,H. & Doering,A. (2018). “From sponsorship to partners: Exploring organisational change in a Japanese DMO”. TTRA Apac chapter 2018 conference, Ho Chi Min city, Vietnam 2018.12.
②調査(1):大阪観光局のパートナーシップ制度に関わる設立経緯,担当部署の役割,パートナーシップ先の現状について聞き取り調査を実施した(4回)。
③調査(2):田辺市内における語り部および観光ガイドに関する現状調査(視察,書面,聞き取り)を実施した(3回)。
④調査(3):和歌山県が実施する通訳案内士の制度の現状調査を実施した(1回)。
⑤調査(4):関西エリアとの比較(ベンチマーキング)として,九州北部エリアの現状調査(視察,聞き取り)を実施した(5回)。
⑥意見交換:DMOにおける財源に関連する意見交換を日本交通公社池知氏(日本交通公社発刊の観光文化における財源の特集を担当)と行った(1回)。
3. その他
①研究助成申請:「観光目的地の競争優位性:訪日客の増加を契機とするDMOマネシ?ャーの役割の変容」,科研費基盤研究(B)(一般)(採択),代表:八島,研究ユニットから竹林明,Doering,永井,キム,牧野,研究ユニット外から佐野楓(いずれも和歌山大学)
②研究助成申請:「スポーツ参加からスポーツ交流?協働への変容過程:ゼネラルマネジャーの諸課題に関するアクションリサーチ」, 2019年度笹川スポーツ研究助成一般研究(不採択),代表:八島,研究ユニットから堀込,西尾,研究ユニット外から長野史尚(九州共立大学)