生態系サービスを活かした環境?健康都市づくり
近年、郊外の多自然地域での散策や観賞、農林業体験といった活動が活発になるなど、自然と関わりながら暮らすことへの欲求の高まりが、特に都市住民の間で顕著になってきています。こうした活動では、人々は五感や運動によって自然生態系がもたらす様々な恵みを知覚?享受し、身体的?精神的?社会的な健康を良好な状態に保っていると考えることができます。
生物?生態系由来の便益、すなわち「生態系サービス」(Ecosystem Services)の価値には、①食料や水、遺伝子資源などの生産?供給、②大気質や気候、水量?水質などの調整、③景観やレクリエーション機会、霊的な価値などの非物質的な利益、④光合成や栄養塩の循環などの支持基盤の形成、があるとされています。このようなサービスを発現する緑地を都市空間の内部に創出することができれば、都市住民は身近な環境で癒しや安らぎを得たり、ストレスを緩和させたりすることが可能となります。では、人々はどのような緑地がどのような生態系サービスを有するかを、どのような五感や運動刺激で知覚?認識し、それによってどのような健康欲求を充足させているのでしょうか? 私たちの研究室では、例えば貸し農園利用者を対象とした調査?分析を通じてこれらの関係を明らかにする研究に取り組み、自然と共生した健康都市づくりに向けた知見を得ることをめざしています。